1999年3月5日、金策に回ってたものの成果もなく、男は七尾を目指し北陸道を走る。
午後1時に七尾に着いて、妻と娘と孫と再会する。
手術後の妻は回復してるかのように元気そうだった。
男は、金策の事も全く妻に相談することなく家を空けていた。
妻は、そんな自分に対して捜索願を出し、富山のフィリピンパブにも探しに行ってた。
「いっしょにいられるんだったら、それでええ」
午後3時、男と妻は覚悟しあってボンゴに乗って、西へ走り出す。
「最後の外食やな」と言って
レストランで夕食を済ます。
その後、車中で寝るため
健康ランドの駐車場へ行く。
ささやかなことやけど、男は妻に
風呂へ入ることを薦める。
「ええって」妻は断り続ける。
妻は、ふっと離れた隙にまた男がいなくなってしまうような気がしていたのだ。
22年間の生活を省みて、とりたてて仲むづましい夫婦でもなかった。
男は11才も年が離れていて、何か頼りにならないように思っていた。
22年間いっしょにいて、向き合って話し合う事もなかった。
今、必然とはいえ向き合い、いたわりあうように呼吸している。
一人で金策してる頃、出口のない絶望ばかりを感じ、生への意欲を失いかけていた。
横たわって寝息をたててる妻は、自分がいるだけでほっとした気持ちでいる。
この女のためにできること、久しぶりに気持ちが前を向いた。
翌日から、職安を尋ねるが見つからない。
男は、
京都にいる姉に相談する。
姉も他の兄弟と同じように自己破産を薦める。
姉の意見に従い、一泊した後再び七尾に戻る。
自己破産、自分だけが助かるような気がして気乗りがしない。
かといって解決する手立てもない。
しかし、妻は病院へ通う事はできる。
逃げる、二人で逃げる。
男は妻に「やっぱり自己破産はやめるわ」
「私はそれでええよ、おっさんといっしょなら」
11才年下の妻は男をおっさんと呼んでいた。
兄のいる津幡の隣町の内灘で、夫婦は今きた道を戻る事にした。
posted by sunny at 19:27| 石川

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